青春モノ文脈で語りたい TVアニメ『宝石の国』
根拠なく明るい予感に甘えられてたのが不思議で
あの頃の自分が 羨ましい
今年最後にして最高の光度と硬度を魅せつけたTVアニメ『宝石の国』が無事(第一部)完結しましたが、最終話を観たことでTVアニメ版でのテーマみたいなものが見えてきたので書こうと思う。
原作未読なので今後の展開は知りませんが、宝石たちと宝石の国(アドミラビリス族、月人、過去のニンゲンや星そのもの)の成り立ちに迫るユートピアとディストピアが背中合わせのSFみたいな感じで捉えていたし、300年無能をやっていたフォスがナメクジに再構築されメタモルフォーゼするにつれ有能さが際立ち周りとのズレが生じる様はSF的だし『アルジャーノンに花束を』的だった。
でも私はこう言いたい、TVアニメ版でやってきたことは春の終わりであり新しい始まり。青春の終わりの物語であったと。
♯12 「新しい仕事」
脚本:ふでやすかずゆき 絵コンテ・演出:京極尚彦 CGディレクター:茂木邦夫
最終話で描かれたのは勿論フォスとシンシャが共犯関係を結び新しい仕事に取り掛かろうとする 僕たちの戦いはこれからだ!エンド だったが他にも印象的に描かれた宝石たちがいる。
まずジルコン、彼と立場が入れ替わったフォスとの対比が対照的だ
彼こそアンタークの件まで無能を呪い迷える者であったこれまでのフォスそのものであり冷静にアドバイスを送るフォスが迷える者から大人に成長したことが伺える。
そのジルコンを暖かく見守るのがイエローダイヤモンド
宝石たちの中でも最高齢である彼は年齢の近いパパラチアに、もう永く考えすぎて疲れたと零していた。
パパラチア同様自分の事より次世代の活躍を願う大人な存在として描かれていた。
アレキサンドライト
彼の口から語られた深い憎しみは彼が選んだ仕事・選んだ道そのものであった。
そしてルチル
これまで本当の感情(解剖欲求は本物かも知れないが)を顕にしてこなかったルチルの選んだ仕事とパパラチアへの想い
迷える青年ジルコンとアレキとルチルが選んだ道との対比、イエローおにいさまがこれから示そうとする道
選んだ仕事を軸にそれぞれの人生(ここでは宝石の意)についてを振り返る非常に大人な回であった。
そして今まさに新しい仕事、新しい道へ踏み出す覚悟を決めつつあったフォスフォフィライトにパパラチアが問う
清く正しい本当が辺り一面を傷つけ まったく予想外に変貌させるかもしれない
だから冷静にな 慎重にな
選べと
お前は、青春をしたんだ。
根拠なく明るい予感に甘えられてたのが不思議で
あの頃の自分が 羨ましい
無償の愛を信じられた幼年期
根拠のない予感に甘えられた青年期(モラトリアム青春)
そして物語はフォスと(ありえんかわいい)シンシャが自分たちの意思で叛旗を翻すものへと続いていくと思いますが、私はこういう青春の終わりの転換期というか、自分の意思で何者かになろうと決めた時の動機、衝動みたいなテーマが大好きですし、そういう過程にこそ青春が詰まっていると考えているのでTVアニメ『宝石の国』についてまとめるとしたらこういうテーマになるんじゃないかと思いました。
そしてはぁー宝石の国良かったぁ、シンシャありえんかわいかったぁ、ダイヤモンドさんの感情量ありえん限界になってしまったわけです。
フォスフォフィライト
お前は、青春をしたんだ。
そして物語は春から修羅へ
目下私の「新しい仕事」は単行本の読了でしょうか。