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おだやかじゃなかった備忘録

2019.3.8「Wake Up, Girls ! FINAL LIVE ~想い出のパレード~」どうしてSSAが埋まったのか

ファンの応援活動の在り方について書きました。

2019年3月8日、大衆的な評価から負け続けてきたとされる声優ユニットWake Up, Girls! FINAL LIVE ~想い出のパレード~」の会場はさいたまスーパーアリーナ。誰もが大きすぎると思ったSSAがなぜ1万3000人で埋まったのか。一般発売のチケットが完売した時WUGちゃん自身が一番驚いていたし、古参やガチなワグナーほど驚いていたように思う。新参の自分は知る由もないが2018年5月12日幕張メッセイベントホールが埋まらなかった「Green Leaves Fes」を体感した人への衝撃は大きかっただろう。

2019年3月8日のSSAが埋まった理由。一人一人の口コミの情熱で埋まったのではと、本気で思っている。

 

One In A Billion

そう思うのは3月8日「One In A Billion」が歌われたこと。そして同曲をWake Up, May'n!としてコラボしたMay'nがチケットを自前で手配し、客席からいちワグナーとして応援していたこと。

正直WUG曲の中でも「One In A Billion」はあまり聴き込んでいなかったしMay'nのことも名前は知っていても詳しくはない。Wake Up, May'n!が結成された経緯も大して知らないのだけど、レーベルメイト同士みたいな商業じみたコラボではなくWake Up, Girls!に惚れ込んだMay'n自身の強い想いによって実現したコラボレーションだと聞いている。

大衆的な評価から負け続けてきたWake Up, Girls!にとって業界の人気歌手直々のコラボレーション。しかも世代的にWUGちゃんにとって憧れの存在との共演がどれほどの希望や勇気を与えたか。

結果的にタイアップ曲全てがWUGにとってセトリから外せない大切なものであり披露されたが、その中でも絶対「One In A Billion」は入るのはわかっていたし、May'nの分空白となった白のスポットライトによって、Wake Up, Girls!からMay'nへ最大限の感謝を示した。

One In A Billion

奇しくも同曲のテーマである100万分の一。

この広い世界で君と巡り合った奇跡。

一人のワグナーとしてWUGちゃんを全力で応援したMay'nや一人一人のワグナーの熱意が巡り巡ってSSAを埋めた奇跡。

 

業界内からの熱意

全国12会場33公演、半年にも渡るHOMEツアーを大成功させたWake Up, Girls!が獲得したエクストラステージSSA公演。例えばμ'sのような他のファイナルライブのケースをよく知らないのだけどHOMEツアーのワグナーたちの圧倒的な熱気とは異なり、SSAで大々的にファイナルを迎える声優ユニットに対するアニメメディアや世間の反応はあきらかに薄かったと思う。最後の半年にも満たない期間しか知らない僕がいうのはアレだけど、雑誌の表紙を飾ったり大々的な特集が組まれたりという話は聞かなかった。SSAに取材に来たメディアも見当たらなかった。もちろんメディアに載るには政治的な手続きが必要だしそういう面でWUGコンテンツの体力が足りなかったのはそうでしょう。 

大手メディアに頼れないWUGがSSAを埋めるのはやはり簡単なことではない。

一般のワグナーだけではどう考えても難しいSSAを埋めるという挑戦をまず後押ししてくれたのは業界関係者の熱意だ。上で挙げたMay'nさんの話もそうだし、声優ラジオを聴く上で避けて通れない鷲崎健さんも多大な貢献をされた方でしょう。自身を言語化おじさんというだけあってWUGちゃんの魅力をとにかく語り尽くしてくれた。WUGは大手メディアには載れなかったけど異常な熱量を持った業界人とのつながりが強かった。

声優ラジオに触れる上で避けては通れないラジオパーソナリティ(本職はミュージシャン)。

本人自ら俺のこと嫌いな奴は多いと思うけど…と言うように喋りや番組追求への厳しさから、推しの番組をただへらへらと聴きたいだけのオタクにとっては苦手意識を持つ人も少なくないのかもしれない。自分も元々少なからずそういう意識を持っていたけど、その実態は音楽やエンタメにどこまでも真剣でエンタメの言語化を本気で実践しているお喋りおじさんだった。

個人的にはAIKATSU☆STARS! の裏曲的な「ラン・ラン・ドゥ・ラン・ラン!」を超カッコいい曲だよねと褒めるのを聴いたとき無性に嬉しかった覚えがある。(絶対広川恵信者だよ)

WUGちゃんに関しても番組で絡む機会が多く、まゆしぃが推しになってからはWUGの魅力の言語化が加速して、自分が仕事の都合上行けないSSA公演やWUGの魅力についてどのメディアより熱く、時には泣きながら語ってくれた。

WUGちゃんねるという楽屋のWUGちゃんにもっとも近い部分を映してくれた神番組に飽き足らずバスツアーや忘年会のライブ配信。WUGちゃんねるだけでなく、親番組ファミ通ちゃんねるの枠でも番組を用意して下さったりと、待遇とスタッフの愛が異常。ワグナーから集めたコメントを色紙にして最後のWUGちゃんねるの配信でプレゼントしたのも尊すぎたな。SSAの前日発売の週刊ファミ通にて、一番見やすい真ん中の折り目から始める18ページもの大特集を組んで送り出してくれた恩は一生忘れない。

アニメイトタイムズさん、というか川野優希さんのWUGに関する記事を是非読んでください。熊本に行けなかった僕は川野さんの記事に心底助けられたしWUGに関してここまで書くようになったのも川野さんの影響が大きい。仕事だからという領域を超えて、自分が知った素敵な世界とその想いを世の中に伝えたい、残したいという熱意をあなたの記事から受け取りました。

フェアや限定特典にどこよりもアツかったお前しか勝たんゲマ(でも僕はわぐらぶで買う)

唯一といっていい放送局による密着特集。

ANIMAX MUSIX 2018 YOKOHAMAではWUGに特別な花道を用意してくれた。

 

i☆Risおじさんからただの水色ワグナーになっていたバロン大野等々、WUGに惚れた一人一人の業界関係者の熱量が尋常じゃなかった。

それとSSAに向けてWUGの各メンバーが色々な声優の番組やラジオに出演していたけどWUGはどこでも推し補正なしで愛されていた。これは補正込みの発言だけどこんな良い子たちいないもん、そりゃ業界人からも好かれるわ。

各界隈オタクは自分の推しの話しか聞かない、これはガチ。でもそれって翻すと自分の推しが勧めるものに関しては興味を持つということ。WUGちゃんがアニメや舞台で共演した人たちの中から熱烈なワグナーが生まれ愛されていったのは、実力以外にも人柄とか色々あったんだろうね。自分の推しがWUGを褒めていたら興味を持つ。オタクってめんどくさいようで単純だ。

完全余談だか舞台プロジェクト東京ドールズの稽古場で堀越せなさんが極スマ歌いながら奥野香耶さんに雑に絡みにいって、「…?」「あ、極スマです笑」「あ…のれなくてごめんね」って気を遣わせたエピソード狂おしいくらい好き。

 

ワグナーの熱意

結局はこれに尽きる。

横須賀でHOMEツアー終了後のエクストラステージ、SSAでのFINAL LIVEが発表された夜センターメンバーは舞台上で不安を零したという。

冒頭に戻るが埋まらなかった「Green Leaves Fes」を体感した人こそFINAL LIVEの喜びとは別に、そういった不安な想いを抱いただろう。わずか2ヶ月ちょっとの準備期間であのSSAを埋めなければならない。前述のようにWUGコンテンツに大々的な宣伝をうつ体力はないのでこれまで通りひたむきにやっていくしかなかった。

ワグナーは既にHOMEツアーを成功させつつあったWUGちゃんの実力を目の当たりにしているにも関わらず、WUGちゃんは自分たちの大衆からの評価に確信を持てず、初めての人でも絶対楽しませるからと売り込みをしなければならない状態。

普通ファイナルを華々しく飾る大型コンテンツのファンだったらむしろチケットの争奪戦になり自分の周りのことしか意識が及ばないだろうけど、ワグナーの場合WUGの実力を知りながらも自分たちで地道に宣伝しなければならないWUGちゃんたちの姿に心打たれ、自分も力になってSSAを埋めたいという当事者意識を持たなかった人はいないんじゃないか。

わぐらぶ先行申し込みの上限7連番は7人というWake Up, Girls!にとって重要な数字であると同時にワグナーよ、どうにか7連番集めてくれという運営からの願いでもあっただろう。

ワグナーはHOMEツアー中各地のあらゆるものを枯らしていったが、わぐらぶ会員限定のHOMEツアー全国12会場スタンプラリーのコンプリート特典であるアルティメットバッグステッカーの配布予定分まで枯れたという。33公演全通者やそれに準ずるレベルの化物ワグナーが3桁は居たって言われてる。

そのレベルのガチ勢や他のワグナーたちが連番者をかき集めることでSSAの半分は埋まったのでないか。

WUGちゃん自身の頑張りや魅力が8割方なのは大前提として、WUGのことを本気で好きな人たちの熱意がいろいろな行間を埋めSSAを埋めるに至ったのではないかというのが僕の考えです。

 

ファンの応援活動の在り方

今回のメインテーマ、まず持論から。

究極のファン活動って推しの仕事に対して自分の仕事で報いることだと思う。自分の番組のフリートークでWUGの事を話し続けた鷲崎さんのように、自分の得意な領域で推しの魅力を伝えるなど外に開いた応援が出来る人ってかっこいいと思う。WUGの場合少なくともファイナルに向けては、これまで書いてきたように外への発信力や熱意ある業界人やワグナーの割合が凄かった。

ここで少しガチ恋論を。これはガチ恋を否定するものではなくただの指摘だけど、ガチ恋と応援活動の両立って究極的には成り立たない。

ガチ恋みたいに究極的には自分だけへの私信を求める行為は自己満足的で閉じた応援活動だ。いやそもそも応援と呼べるのか。推しのことを語っているようで自分語りやイキりにしかなってない人が多くないか?自分の好きな対象の魅力を客観的に人に伝えるのって難しいんだ。内向きの応援が推しの活動を後押し出来るのか疑問だし先へのつながりを生まない。自意識的にやってるならいいと思う。実際イキるのは楽しいし誰だって接近の後はガチ恋しちゃってる(個人の感想)。

ガチ恋とは別の閉じた応援について具体例を挙げるのはアレだけど(そんな◯理が好きだよおじさん)とか(W◯Gちゃんがんばっぺおじさん)とか相手の想いを汲んだ上で放ったものではない。自分が気持ち良くなるための言葉だ。繰り返すけどこれは批判ではなく指摘、いやでも例が具体的過ぎて流石に悪口か。現場だとこういった不確定要素が面白かったりするしなんだかんだ本当に嫌いではないのだけどこのニュアンス伝わるかな。

自分の愛の重さでイキるな。究極的にはオリンピックで金メダルを獲った時やノーベル賞を受賞した時、推しが支えでしたと言えるオタクが世界一カッコいいと思う。自分の仕事や人生の中でこそ推しに報いたい。話が逸れている。

 

繰り返すがワグナーを語る上で当事者意識というものが度々挙げられた。WUGちゃんのとてつもない魅力や実力を知っているのは自分たちだけで、彼女たちが世界から見つけられず認証されない悔しさ。満員のSSAを確約させてあげられない悔しさ。

何よりWUGちゃん自身のSSAを埋めることに対する不安や色々な番組に出演してひたむきにお願いしている姿に心を打たれ、当事者意識を持たなかったワグナーはいなかったと思う。

界隈だとか勢力争いだとかクソったれが横行するアニメコンテンツ業界の中で、自分語りやイキりではなくWUGをただ知って欲しい見て欲しいという純度の高い外に開いた応援活動が繰り広げられた、そんなSSAまでの準備期間だったように思う。

これだけの規模、これだけ濃いファンの応援活動はもう二度とお目にかかれないかもしれない。僕はワグナーの功績をこうやって言葉に残す。

 

HOME

最後になるがSSAの完売はWUGやワグナーにとって本当の目標ではなかった。

本当の目標はこれまで各地にHOMEといえる場所を増やし続けたWUGの活動における最後のHOMEをSSAに作ることだったと思う。

だからチケット完売した後も、何千人もの新規が訪れ完全HOMEにはならないと予想される空間をどうやってHOMEに変えていくか。その為にワグナーにどういう振る舞いが出来るか考えた人は多いと思う。2600人の精鋭が集まった公開リハでのコールはまったく響かなかった。やはりSSAは大きすぎた…

だから開演の瞬間までWUGがSSAで勝てるのか分からなかったし、新規の心をぐっと引き込むために初手「海そしてシャッター通り」や「言葉の結晶」がありえるのではと本気で考えていた。

 

浅沼さん、日高さん、鈴村さんの開場アナウンスが終わり一曲目のイントロが流れてくる。はじまりのコールが世界一カッコいいあの曲だ。

 

Wake Up, Girls!

のコールと共にSSAが本当に爆発した瞬間、

大衆的な評価から負け続けてきたWake Up, Girls!は既に勝っていた。SSAの全員の心を掴んでいた。

2600人ではまったく響かなかったSSAに1万3000人の熱量が響き渡った。

WUGちゃんやワグナーの熱意はちゃんと新規に届いていたんじゃん…既に全員ワグナーでHOMEだった。

 

そうやって「Wake Up, Girls! FINAL LIVE ~想い出のパレード~」の幕が上がったんだ。